至近距離の音と遠景としての音
2008 / 05 / 30 ( Fri )
マイクを音源に近づけて録音することを「オンマイクで録る」、逆にマイクを音源から遠ざけた状態のことを「オフマイク」と言ったりします。当然、至近距離から録った方が音量も大きくクリアに録れますし、マイクを離せば離すほど音はボヤけて不鮮明なサウンドになります。

だったら「出来るだけオンマイクで録るべし。」となりそうですが、一概にそう言えないのがマイク録音のナヤマシイところであり、また面白いところでもあります。

この音を聴いてみてください。

(click↓して再生=10秒)
オンマイクでカエルの鳴き声

水田の畦道、枯れ草の下で鳴いているカエルを見つけまして、向こうからもこちらの姿が見えないのをこれ幸いと、鳴き声の主に15cmくらいまでマイクを近づけて録ったものです。

先日、シュレーゲルアオガエルの合唱音をアップしました。(08年5/19日の日記。)今日のものと聴き比べてみると、(おそらく)同じ種類のカエルの鳴き声なのに印象がずいぶん違うと思います。かなり音量を抑えたつもりですが、それでもオンマイクで録った鳴き声は「気持ちのいい音」とは言いにくい。ボリュームを少しずつ上げていくと、じきに「耳が痛い」感じがしてくると思います。

これは音の大きさだけの問題ではなく、オンとオフでは音質が大きく変わっていることも関係しているようなのです。直接音と反射音のバランスの違い…などというとハナシが小難しくなるので、おおざっぱに「響き」があるかないかの違いと言っても良いでしょう。

人が「心地よい」と感じるのは、離れたところから聞こえてくる、複雑な響きを含んだ音であることが多く、沖をゆく漁船の音であれ虫の音であれ遠景音として聴くことでこそ、そこにのんびりとした、あるいはシミジミとした情緒を見いだし得るのでしょう。涼やかな風鈴の音だって耳横5cmで延々と鳴らされたら、これはちょっとした拷問です。

さて。
マイクをどのくらい音源に近づけて録るか…。
もちろんそのセッティング方法はケースバイケースですが、これが録音の目的に応じておのずと決まる場合もあります。

目的1:そのまま聴いて気持ちの良い自然音を録りたい
目的2:研究材料として、あるいは効果音の単体素材として録りたい

1の場合にはその場でマイクとヘッドフォンを通して聴いてみて、もっとも心地よく感じるマイクセッティングを探ることになります。先日のシュレーゲル合唱団の録音や、森の響き・エコーをたっぷりと含んだ野鳥のコーラスなど、オフマイクで音風景全体を録る方法です。

しかし、2のような目的で録音する場合には上記のやり方だと問題が出てきます。
鳥の生態を研究している人たちは、録った音から後日さまざまな解析を行う必要が出てくるかもしれません。「地鳴き」と「さえずり」のピッチ(周波数)の差、あるいは声紋分析などなど。

(今日アップしたカエルの鳴き声のフォルマントをみてみると2kHz〜3kHzがかなり強く、これが「耳に痛く」聞こえる原因のようです…)
frog_analysis.jpg


この際、たくさんの種類の鳥の鳴き声が重なり合って、しかも深くエコーのかかった状態で録音されていると、この手の研究材料としてはまず使い物にならないはずです。クロツグミならクロツグミが、一羽の個体のみ鮮明に録れていることが望ましい。

これは音響効果の効果音素材として音を録る場合も同じです。響きの無い音にあとから残響を加えることは出来ます。しかし森のエコーがかかった鳥のコーラス録音から「響きだけ」を消すことは不可能で、こういう音を、たとえば見通しの良い開けた林を撮った映像シーンには使いにくいわけです。

というわけで、1の目的で録音をする場合はオフマイク、2の時にはできるだけオンマイク…というのが(かなり乱暴ですが…)マイクセッティングのひとつの目安となります。とはいえ例外はいっぱいありマス。この例外については「清流の音を録る」例などを挙げつつ、いずれまた実験してみましょー。

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コップと水と笛で雀
2008 / 04 / 30 ( Wed )
今日は短い竹笛で雀の鳴き声にトライしてみます。
コップに水を入れてその中に竹笛を突っ込んで吹きます。つまり竹笛を水笛のようにして使う…というやり方。

fue_suzume.jpg


小鳥の鳴き声は「ぴよぴよ」ですが、これは高い音の鳴る笛を使えば「ぴ」という似た音が出ます。でも「ぴよぴよ」の「よ」のニュアンスを出すのが難しい。雀なら「ちゅんちゅん」の「ち」は出せても「ゅん」をうまく真似できない。

ところが水の中に笛を入れて吹くことで「ぴよぴよ」の「よ」あるいは「ちゅんちゅん」の「ゅん」の音がカンタンに出るから不思議です。笛の中に入り込んだ水の容積が変化するからでしょうか。

この乾いてスカスカの竹笛、普通に吹いたらどういう音がするか…も録音しましたので、サンプルmp3を聴いてみてください。ちなみに効果音としてマイクで録るためには「すー」という息の音が録音されないように工夫する必要があります。

(↓clickして再生=12秒)
ちゅんちゅんスズメ

鳥の鳴き声を真似する道具としては笛の他にもバードコールと呼ばれる「洋もの」もあったりしてとても興味深いジャンルです。伝統的な鳥笛などの効果笛とあわせて、色々とこの場でも取り上げてみようと思います。

さて余談ですが、鳥笛バードコールを使ってやる「鳥寄せ」と呼ばれる行為、今の季節は厳禁とのこと。鳥の繁殖期だからだそうです。鳥寄せって、名人の鳴き真似を仲間と思って鳥が集まってくるのではなく、変な音への警戒心で様子を見に近づいてくるのだとか。なので交尾期や子育ての時期にむやみにこういう音を鳴らすと、卵産まなかったり育児放棄する野鳥が出てくるそうです。

自宅でこの雀もどきの笛を吹いていたら深夜二時だというのに、外のカラスが鳴き始めました。あのうがいするようなキタナイ鳴き声で…。憎っくきカラスめ〜。
参照→子雀救出ミッション(2007年8月29日の日記)

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遠雷
2008 / 04 / 18 ( Fri )
ん?飛行機の音かな…??と思ってしばらく耳を澄ませているとゴロゴロ〜という音が確かに聞こえて、ああやっぱり…というのが遠雷

春雷はあっという間に聞こえなくなってしまうことが多いのですが、夏ならレコーダーとマイクの準備さえしておけば、ホンモノの雷の音を録ることができます。しかし、夏の雷はたいてい夕立を伴った雷雨。雨音の入っていない雷鳴を録音するとなるとこれはなかなかその機会がありません。

舞台、映像作品における音響効果の世界でも、雷はここぞ!という所で印象的に鳴らすものなので、雨とセットになった録音よりも単体の素材であることが望ましいということになります。

雷鳴の作り方は、歌舞伎で有名な雷車(らいしゃ)とか木の箱に石ころを入れて揺らす…などなど伝統的なやり方が色々あってこれも面白いので機会を改めてここでもやってみましょう。

さて。
雷雲が真上にあってバリバリいっているのでなければ(つまり遠くで鳴っている雷であれば)雷鳴の特徴はだいたい次の二点かと思います。

・高音が無くて、不明瞭な低音のみ
・長〜い山びこのように遠くで音の反響と繰り返しがある

ゴロゴロ〜という擬音語も、実はかなり正確に雷の音を模写していて、たとえば木造家屋の二階で球状、筒状のものを板張りの床に転がすと、階下ではその音が雷のように聞こえたりします。まさにゴロゴロ。

というわけで、今回試してみるのはほとんど道具要らずのインスタント雷鳴の作り方。

どうやるかというと…
フローリングの床にゴルフボールを転がすだけ。

ボウリングのように、長く転がり続けている音は雷っぽくないので、止めたり強弱をつけたりしてメリハリをもたせます。これをマイクで録って二種類のエフェクトをかければOK。
必要なエフェクターはEQとディレイ(あるいはエコー)です。イコライザーで高域というより中音域より上(400Hz以上くらい)を切ってしまい、必要に応じて低域を足す。

あとはディレイで山びこっぽさを加えれば、遠〜くでかすかにゴロゴロ云っているあの感じがでます。

サンプルmp3はモノラルですが、これがステレオになればもっとリアルに、広く遠く鳴り響くあの雷の雰囲気がでます。ゴルフボールだけで。(今回は二個使用)

(click↓して再生=20秒)
ゴルフボールで遠雷

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掃除機で風の音
2008 / 04 / 11 ( Fri )
風の音」は効果音の定番、TOP3に入ると云って良いかも知れません。
(あとの2つは「足音」と「雨音」かな…?)

強風・暴風・突風・微風・春風・寒風・潮風・木枯らし・空っ風・すきま風・ハリケーン・木々を揺らす風・洞窟の中に吹く風・寂れた宿場を吹き抜ける風・ビル風・氷上に吹き荒れるブリザード…。

さまざまな情景ごとに必要とされる風音は多種多様。

松林を抜ける風音をわざわざ松籟(しょうらい)などと呼ぶあたり、日本人はとかく「風」に情感を聴きたがる傾向があります。ですから音響効果ということを考えた場合、強弱のバリエーションだけでは、そのシーンにぴったりの風を吹かせることはできないわけです。これは雨音も同じ。

そこで、舞台・ラジオ・映画のサウンドエフェクトにおいて先人達はありとあらゆる風の音色を模索し、その音を出すための工夫を競い合ってきました。
ここでも、いずれそういった古典的な風音の作り方を実際にやってみようと思っています。

で、まずは暴風。
掃除機を使って、強い風音を出してみましょう。

用意するものはアルミの空き缶。

1 缶切りで上面を抜きます。

2 底面の真ん中には一円玉くらいの大きさで穴をあけます。
 (綺麗に丸く切り抜く必要はありません。)

準備はこれだけ。

掃除機の先端を缶の底穴に近づけ、そこを手で軽くおおうように持ちます。吸い込み口を穴に近づければ高い音、少し離せば低い音…これを微妙に調整しつつ「風のうなり」を演奏するわけです。

cleaner_wind.jpg

(マイクの先端は缶の中に少し突っ込んだ状態で録ります。)

せっかく空き缶があるので、これを転がした音も録音して混ぜてみました。

(↓clickして再生=19秒)
掃除機で強風

さらに、新聞紙が飛んでいく音、看板やシャッターがばたばた言う音…などをMIXしていけば「暴風吹き荒れる街中」の音が作れまっす。

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日本の情景音
2008 / 04 / 06 ( Sun )
日本の音…というと、お寺の鐘や「ししおどし=添水(そうず)」の音などがしばしば挙げられるわけですが、街に住む現代の庶民にとって、添水はもちろんのこと鐘の音でさえ「日常の音」ではありません。

リビングで子供達が遊ぶ家庭用ゲーム機の音は立派な「現代日本の音」と云えるでしょう。でも、インベーダーなどのアーケードゲームの音はもはや「懐かしい日本の音」というカテゴリーに入りました。

改札を通るときのピッという電子音、ホームに流れる発車メロディなどは、「駅」というシチュエーションを表現する効果音として定着していますが、それもここ十数年のこと。

パチンコ屋から漏れてくる軍艦マーチの音楽、駅員がリズミカルに鳴らしていた改札鋏(かいさつきょう)の音、どの学生コンパでも聴かれた「いっき!いっき!」というガヤ音…どれも今やノスタルジーを感じさせる音風景になっています。

このように「日本の音」というものを列挙しようとすると、思いつく音のほとんどが短いスパンでの「時代限定もの」であることに気づきます。そうでない「traditional sounds in japan」となると冒頭に挙げたような音、つまりいきなり時代劇めいた音になってしまいがちです。

ただ、その中でも食生活に関わる音には、2〜30年程度で「古くさくなる音」というものが少ないように感じます。まな板の上で野菜を切る音、蕎麦やうどんをすする音、漬け物を囓る音、鍋の音、焼き肉の音、箸や茶碗や湯飲みの音…などなど。
どれも現在なお生き続けている日本の情景音と言えそうです。

というわけで、たとえばこういうものも「日本ならではの音」と云って良いのではないでしょうか。

(↓clickして再生=13秒)
朝ご飯は玉子かけご飯。

ところで、玉子(あるいは玉子の殻)は各種効果音を作る際になにかと重宝な材料。これについてはまたいずれ。

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