映画『ブレードランナー』の街ガヤ
2008 / 12 / 01 ( Mon )
リドリー・スコット監督による不朽の名作『ブレード・ランナー』。
近未来を設定しつつもシックな美術と(ヴァンゲリスによる)音楽の深みが素晴らしく、何度観ても「これが四半世紀前のSF映画なのだろうか…」と驚くばかりです。

ところで、この作品に出てくる街の喧噪音の中に日本語の繰り返しフレーズを聴く事ができます。主人公(ハリソン・フォード)がヘビ女(お色気むんむん…。)の楽屋を訪れるシーンの前後に、

「あれ見ろよ。誰か変なものぉ残してったぜ。」

という若い男性の声が何度も何度も聴こえる…。

映画史上に燦然と輝くサイエンスフィクションのマスターピース『ブレード・ランナー』から、該当箇所の音を聴いてみてください。
同じ日本語が、この部分だけで何回出てくるか、分かりますでしょうか…。

(click↓して再生=36秒)
かなり混沌としておりますが…

映画やドラマで背景音として使われるこういう群衆の喧噪音を、音響効果の分野では「ガヤ音」と呼びます。このガヤ音は、特に長いシーンの場合「ループ」で使われることがほとんど。今は100%パソコンで処理しますが、昔なら録音テープを適当な長さに切って輪っかを作り、エンドレスで再生しつつ他の録音機にダビングするというやり方です。

たとえばこんなカンジ。

tapeloop.jpg
(厳密にはこのタイプのデッキをループには使いませんが、説明省略…。)

さて。ここで試しに上記の日本語フレーズがどのくらいの間隔で繰り返されているか、を測ってみました。

「残してったぜ」の「ぜ」を起点に測定してみてみると、ほぼ6秒ごとの反復。業務用録音機のテープスピードは19cm/秒あるいは38cm/秒のどちらかなので、実はこれらのことから、次のような(どーでもいい)推理ができます。

『ブレード・ランナー』の音効さんがこの日本語フレーズ効果音のために用意したテープの長さは114cmもしくは228cmで、これを輪っかにして使ったらしい…

と。

every6sec.jpg
(「ぜ」の部分にマーク。等間隔に繰り返されていることがわかります。)

ちなみに「あれ見ろよ。誰か変なものぉ残してったぜ。」というのが、ここで使われている日本語のフルセンテンス。これを基本にして
「変なものぉ残してったぜ」
「残してったぜ」
というバリエーションも作ったのだと思われます。

発音が連続しているにも関わらず、きちんと意味の区切りごとにミキサーのフェーダー(音量)を上げ下げしていることから、もしかしたら日本語のわかる人が編集に立ち会っていたのかもしれません。
(このバリエーションのために、はじめは等間隔の反復であることに気づきませんでした…。)

また、これとは別に

「〜ぁ、誰かからプレゼント。」

という、矢野顕子さんが少し早口になったような女性の声も繰り返し聴こえます。さらに、上掲mp3の最後の部分には、たぶんアメリカ人の発音による「ワダサンっ」という男性の声が…。この二つが聴こえなかった方は、もう一度聴いてみてください。きっと聴こえるはず…。

実はこのへんてこな日本語の数々、『ブレード・ランナー』マニアの間では有名なのだそうです。私はここ十年ほど、酒席でこの「発見」を得意げに語ってきたのですが、とんだ赤っ恥でした。

そんなこと、みんな知ってるみたい…。

凹。

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