山の中・沼・真っ暗闇の中から咆吼…。
2008 / 07 / 17 ( Thu )
先月、カエルの鳴き声を録ろうと、福島の森の中、平伏沼(へぶすぬま)というところで一晩を過ごしました。

現地到着が夜の八時になってしまい、下見も何もあったものではなく、いきなり真っ暗闇の森を抜けて真っ暗闇の沼のほとりにたどり着きました。狙いのカエル以外に少なくとも二種。よく鳴いています。しかし道がぬかるみ、水際がよく見えません。沼にだけは落ちたくないな…と、ビクビクしつつ場所を決定。マイクをセットして、あとは翌朝日が昇るまで生録三昧です。

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<沼までの山道、昼と夜>

カエルを驚かさぬようヘッドライトも消灯していたため、目の前に広がっている(と思われる)沼もさることながら、背後左右の森がどうしても気になります。ガサっと音がするたびにドキッ。

さて。そんな繰り返しにもちょっとだけ慣れてきた頃、いきなり「その咆吼」は飛び出しました。小心者の私が真っ暗闇の中でこの声を聴いて、どれほど肝を冷やしたか…ご推察ください。その時の印象では「あ、もうすぐこっちに飛び出してくる、なんかわかんないもんに噛みつかれる…」というカンジ。身体がすくみました。

(click↓して再生=16秒)
だぎゃ〜っ…ぎゃっぎょっぎょっぎょっぎょ…。

結局、零時前と二時半頃に二回、長々とこの叫び声を聴いたものの、無事(?)でした。昨年、和歌山の山中で鹿に至近距離から「ビーっ!」と威嚇され、腰を抜かしたことがありますが声がまったく違います。なんだろう…。

平伏沼にはカエルを見守り保護している番人さんがいらっしゃいます。翌日の昼頃、このおじさんに会いました。
沼に至る道沿いで、太い枝が半ば折れて落ちてきそうになっていて、あれをどうやって伐るか…などの話をしている時、ふと昨晩のことを思い出したので、録った音をヘッドフォンでおじさんに聴いて貰いました。

「聴いたことねぇな…。タヌキかな。」
「タヌキって鳴くんですか?」
「タヌキ、鳴ぐかな?鳴がねぇだろうな。ははは。」

というやりとり。
そして「ここいらに鹿はいねぇもんな…。」とのこと。
じゃ、あの叫び声はいったい…。

numa-kiri.jpg
<昼間の沼。さーっと霧が降りてくると、とたんにカエルが鳴き出す…。>

実は後日、この謎の声解決。野鳥研究家の松田道生さんから「フクロウの雌の鳴き声だろう」とのご教示をいただいたのです。松田さんが開設していらっしゃる、鳥の鳴き声と録音に関するサイトに、まさに上掲の音とそっくりな鳴き声がアップされています。こちらは日光在住の方が2006年10月に録音なさったもの。

松田道生さんのサイト→「syrinx」
(Topページから→collection→謎の鳥→謎の鳥-17)

沼の番人=カエルの保護者おじさんはとても物静かで優しそうな方でした。お目当てのカエルは深い霧のせいか昼間も鳴いていたので、またまたマイクをセット。でもおじさんが居るので録音はちょっと無理かな…と思っていたのです。ところが、丸太で作った番小屋に入ったおじさん、まったく音をたてない…。寝てるのかな?と思って、開け放たれた戸から覗くと、小さな小さな音でラジオを聴いています。私を気遣ってくださったのでしょうか。とにかくこれほど「静かな人」はまずみたことがなく、そのことがとても印象に残っています。

そうそう…。トランジスタラジオから小さく小さく聞こえてきたのは「アルプスの少女ハイジ」のテーマ曲。なんだかそれが妙におじさんに似合っていて微笑ましく思いました。
昨年、ハイジ役の大ベテラン声優=杉山佳寿子(すぎやまかずこ)さんと、短編アニメーションのお仕事でご一緒する縁に恵まれたのです。残念ながら私は音楽とSEのミックスダウンに仕上げ当日まで追いまくられ、科白録りには立ち会えなかったものの、そんなハイジつながりも含めて、
「低い声で鳴くカエル・大きな声で叫ぶ雌フクロウ・静かなおじさん」
が記憶に残る、良い音の旅となりました。


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