松本電鉄の笠かぶり電鈴踏切

長野へ。

せっかくなのでちょっと頑張って松本電鉄に足を伸ばしてみました。

この路線にもまだいくつか「鐘の鳴る踏切」が残っていること、
しかもここの電鈴（電鐘）は独特の形をしていること…
を詳しい方に教えていただき、ずっと気になっていたのでした。

　

なるほど噂通り、鐘の上に「笠」が乗っています。
多雪地ならではの工夫。

今回は残念ながら雪が積もったかわいらしい（に違いない！）
電鈴の姿を見ることはできませんでした。

ここは北新（きたにい）・松本大学前駅。
切符販売やら改札業務などを委託されているおばちゃん二人に聞いた話がちょっと面白かったです。

おばちゃんA:
「鐘が鳴りだしてすぐホームに出て行くと早すぎるのよね。
　だいたい、チンチンって音が80回くらい鳴ったあたりでちょうど電車到着よ。」

おばちゃんB:
「へ？あなたいつも数えてんの…！？」



走る電車の中から音で確認した限りでは、
松本～新島々間の四カ所に電鐘踏切音が聴こえました。
波田、森口、北新・松本大学前、信濃荒井それぞれの駅近くに。

（click↓して再生=28秒）
松本電鉄上高地線上り電車、北新踏切通過。

ためしに数えてみたところ、この踏切では

上り電車通過時には約８０回
下り電車通過では約１５０回

の打鐘音が鳴っているようです。

ふむふむ、確かにチンチン60カウントあたりでホームへ出て行けば、
下車客を迎えるのにちょうど良いみたい。



Aさんいわく
「早く出ちゃうと寒いでしょ。」

へ～ってカンジで感心しながら聞いてたBさん。
ひょっとしたらあれ以来彼女も鐘の音を数えてる…かな？

風鳴り

風がモノにぶつかって生まれる「音のうなり」を
私たちは風音と呼んでいるんだと思います。

たとえば日本には虎落笛（もがりぶえ）なんていう情趣あふれる風音もあって、
これは竹垣に風が当たった時に鳴るぴーぴー音で冬の季語です。

電線や電柱、窓枠はもちろんのこと、
樹木、奇岩、投棄された廃車、児童公園の遊具…などなど
風が音を出す時に組むパートナーは実にさまざま。

風の強い日には世の中の色んなモノが鳴ります。



上の写真は国交省が管理している水門ですが、
ここに取り付けられた鉄製の外階段が強風に共鳴しているようでした。

風が吹いている間は鳴りっ放しか、というとそんなことはなくて、
風向きなのか、風の強さに依るものなのか、
モロモロがちょうど良いアンバイの時だけ音が出るらしく、
そのデリケートさが実にフシギです。

（ckick↓して再生=24秒）
強風下に2つのピッチで鳴る鉄階段

ほぼ正確に「ミ」の音とそのフラット音が、
時には境界で薄く重なりつつ交互に浮き上がってくる…
というのも、ちょっとしたミラクル。

「音が2つあれば、もうそこには音楽という＜流れ＞が生じているのさ。」

と言わんばかりの孤高っぷり。
さてはこの鉄階段、頑迷な職人気質か！？と思えば、
トレモロ奏法で音の強弱をも揺らす遊び人っぷり。

二度音程の不協和と半音進行があいまって、
なかなか幽玄な響き、ファンタジックな音風景でした。

再会？

まずは新年に録った音の中からピックアップしてアップロード。

（click↓して再生=14秒）
雪かき中のおじさん、こんにちは。はい、こんちわ。

なんだこれ？という音ですが、雪道を歩いていて
レコーダーが録音状態になっていることに気づかず
録れてしまった、見ず知らずのおじさんとの挨拶です。

まあ要するにNG録音。
ただ、帰宅してこれを聴いた時に
「ん？？」
と、何かが記憶のどこかにひっかかりました。

この場所は、以前「ガス鉄砲」の音を録った山間集落。

その時、色々と話を聞かせてくれたおじさんとのやりとりを
09年10月05日にアップしています。
（→　獣害対策：前編）

正月明けに幾つか録りたい音があって新潟へ。
せっかくここまで来たのだから、あの集落の雪景色も観て帰ろう、
と帰途に立ち寄り、再訪しました。



で、今回の失敗録音を聴いて何に気がついたかというと…。

この「はい、こんちわ。」って言ってる人は
もしかしたら前回ここを訪れた際に会話したあのおっちゃんじゃなかろうか…
と思ったのです。

その折には長く立ち話をしたにも関わらず
おじさんの顔はパーフェクトに忘却。
今回も挨拶を交わしていながら容姿の記憶はまったくなし。

でも戸数わずかな小さな集落です。
そんなことからも同一ジンブツである可能性は結構高いのですが
10月05日の録音と聴き較べてみていかがでしょう…？

いかがでしょう…？とか言われても
そんなこと知るかっ！
と、まあ私なら思うんですけれども。

この日、生まれて初めてカワガラスを見、その声を聴きました。
冬の渓流に、強い瀬音を背負ってさえずるこの野鳥、
なるほど、クリアーな鳴き声を録るのはなかなかムズカシそうです。