センターキャンセル・テクノロジー(承前)
2008 / 08 / 21 ( Thu )
前回からのつづき。
下のキャプチャー画像は、前回アップしたオリジナルの放送音声(の一部分)。

olympic_original.jpg

黄色のラインで挟まれている波形が左(L)チャンネル、その下が右(R)チャンネルの音です。それぞれの山と谷がほとんど一致しています。これが元の状態。このステレオサウンドから、Lチャンネルのみを逆相にすると以下のようになります。

olympic_phaseinvert.jpg

山と谷がほぼ線対称になりました。片方を逆相に、つまりひっくり返したことでLチャンネルの波形で「山」になっているところがRでは「谷」になっています。

この処理を施すと、実況中継放送の音がこんな風に変化。

(click↓して再生=18秒)
前回とまったく同じ箇所です。

競技場のざわめきや歓声はほぼそのままに、戸崎アナウンサーの声はほとんど聞き取れぬほど小さくなって、センターキャンセルとしては成功。

ただ、色んな放送で試してみると真ん中に定位されているはずの音も、きれいに消えたり消えなかったりと、その効果は毎回異なります。アナウンサーや解説者が静かに喋っている部分では比較的良く「消える」のですが、大声を出したり絶叫したりすると、センターキャンセルの効果が薄くなることもありました。
このような場合は…

○放送席のすぐ近くに現場音収録用のマイクも設置されていて
 これがアナウンサーの声を拾ってしまっている

つまり、アナウンスが完全なモノラル(&センター定位)になっていないからかな…などと想像してみましたが、実際のところはよく分かりません。そもそも北京オリンピックは全種目サラウンド放送となっているはずなので、もはや今までのようにステレオ/モノラルという枠で音を語ることができなくなっています。

今回は手作業で「真ん中の音を消す」実験を試みましたが、ボタン一発でこの効果を体感できるSoftware/Hardwareもたくさんあります。ただし、センターキャンセリングの際、LとRの音がほんのちょっとでも前後にズレたらもうアウト。
今回の場合(サンプリング周波数44.1kHz)片方を44100分の1秒遅らせた(あるいは早めた)だけで、消えていたはずのアナウンサーの声がまた聞こえてきました。

これは波形の線対称つまり「山と谷」がズレたからで、音の位相とはそれほどデリケートなものだと分かります。安価な編集Softwareやオーディオインターフェースと本格的な製品の違いは「機能」というより、この「決して位相をズラさない精確さ」が一つの目安になるかもしれません。

すでに世の中は、192000分の1秒単位の精度で音を録音・編集できるところまできています。
それも民生機とパソコン一台で。

やっぱりこれはタイヘンに驚くべきことだと思います。

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センターキャンセル・テクノロジー
2008 / 08 / 19 ( Tue )
市販の音楽CDから(疑似)カラオケを作る方法として知られている「センターキャンセル」という技術。

歌=メインボーカルというのは、たいてい「二つのスピーカーのど真ん中」から聞こえるようになっています。センターキャンセルとは読んで字の如く、真ん中にある音だけをキャンセルする。つまり左右にステレオで広げられた伴奏は残して歌だけを消す(小さくする)わけです。

具体的には「ステレオ音声の片方のチャンネルだけを逆相にする」ことでこれが実現できるのですが、理屈は省略しましょう。今はこの音響処理をパソコン上で行うことができます。

今回は、このセンターキャンセルの応用実験です。

今まさに北京オリンピック開催中ですが、スポーツ中継を観ていてしばしば感じるのは
「アナウンサーと解説者のお喋り無しで観戦したいな〜」
ということ。特に民放の扇動的な実況アナウンスがとても苦手です。

一方、野球中継などで
「副音声では球場の音のみをお送りしています」
という放送がありまして、あれは実に素晴らしいと思います。でも全てのスポーツ中継に採用されているスタイルではありません。

そもそも、アナウンサーと解説者はそれぞれ一本ずつのマイクで喋っていて、この音声はモノラルにまとめられているはず。これに加えて複数のマイクからの、球場や競技場の雰囲気を伝える音がステレオでMIXされている。だとしたら、これもセンターキャンセルでアナウンスの音量だけを下げることができるのではなかろうか…。

まあ、そんなことを考えたわけです。
音楽CDの例と対照させるならば、アナウンスがボーカル、スタジアムの雰囲気音が伴奏に当たるでしょうか。

というわけで、まずは素材となる音をアップします。

(click↓して再生=18秒)
オリンピック実況中継放送(original)

実況アナウンサーはTBSの戸崎貴広さん。この方の声はうるさく感じないのですが、TVをつけた時にちょうど放送していたので実験材料に。

戸崎さんはデリケートなノドの持ち主なのでしょうか、声が枯れてますね。お疲れさまです…。

さてさてセンターキャンセルで戸崎アナの声はどこまで消えるか…。
次回へ続く。

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エアコンの室外機
2008 / 08 / 16 ( Sat )
例年、夏になると気になることがあります。エアコンの室外機が出す音です。

この程度の騒音で神経質になれるほど静かな住宅地、感謝すべきなのでしょう。でも、やっぱり気になり出すともういけません。耳と意識がこの音に集中してしまう…。

(click↓して再生=16秒)
裏の家の室外機の音。


午前二時過ぎ、うちの洗面所の窓から録音しました。大した音量でもないのです。ただ、録った音を聴いてみると、低域が結構出ていることに気づきます。厚手の防振ゴムなどを下に敷くことで少しは軽減できる騒音なのかも。

以前、とある住宅街を歩いていたときに、古くなってキーキーときしみつつ鳴っている室外機に出くわしたことがあります。これが隣家だったらオソロシイな〜と思う大音量でした。

開けた窓から毎晩このキーキーを聴かされてはたまらないだろう、そうなると自分は深夜こっそり油を差しに行くかもしれない、で、犬に吠えられる。ぱっと部屋の灯りがついて、カーテンが開いて住人に見つかる…。

その時、真夜中のヒトサマの裏庭で、懐中電灯と潤滑油の缶を握りしめた自分はいったいどういう言い訳をするだろう…というところへ想像がふくらみ、緊張のあまり汗が噴き出しました。

裏の家の室外機がキーキー言い出さぬよう、祈るばかりです。

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こんな近くに…。
2008 / 08 / 05 ( Tue )
土曜、日曜と一歩も家から出なかったので、昨晩遅くに自転車で散歩…というより徘徊。今の時期、虫の鳴き声はどんなカンジだろう…とレコーダーも持って出かけました。

予想に反して虫はあまり鳴いておらず。近所を一回りして帰ることにしました。

東京のベッドタウンとして拓けて久しいこの街にも、旧家の立ち並ぶ一画があります。どの家屋も豪農といった風格で、広い敷地に手入れの行き届いた庭木。長屋門のある屋敷さえあって、これが現役の住宅なのですから驚きです。

そんな鬱蒼とした屋敷林を抜ける、暗く細い急坂を登り切って一息ついたまさにその時。
頭上にふわっと何かが飛び立ちました。大きさからすぐにフクロウ!と知れました。

そーっと自転車を降り、地面にしゃがみ込んで見ていると、二本の電柱と二本の大樹を順繰りに渡りつつ、向こうもこちらの様子を伺っているようです。羽音をまったく立てずに飛ぶ姿は暗闇の中でさえ神々しい。ポケットにネズミが入っていたら、今すぐこの鎮守の鳥に供えたいと思いました。あいにく持ち合わせのネズミが無い。寺門の薄暗い電灯に時折光る目が見えています。息を潜めて10分…20分…と経過。

AM2:50、なんと鳴いてくれたのです。

(click↓して再生=29秒)
この鳴き声はたしか…。

幼鳥…!?真っ黒なシルエットしか見えませんが、まだ全身毛玉のようにモコモコの幼羽を纏っているのかもしれません。5分ほど断続的に、そして2分ほど連続して鳴いて、それから徐々に遠ざかっていきました。

帰宅してすぐに『日本野鳥大鑑鳴き声420』(小学館)のCDで鳴き声を確認。ああ、やっぱり…。故・蒲谷鶴彦先生が41年前に録音なさった鳴き声とたぶん同じ。ただ今回録れた声の方がかなりハスキーに聞こえます。

蒲谷先生は1967年の7月10日に奥入瀬でこの鳴き声に出くわし、何の鳥だか分からぬままお録りになったのです。それから五年の後、軽井沢の茶店で飼育下のフクロウの幼鳥がまさに奥入瀬のあの鳴き声で鳴いたのをお聴きになって初めて「キーッ、キーッ」という声の主が特定できたんだそうです。これについては何度も繰り返し聴いた、先生と松田道生さんの対談録音の中でも触れられていて、とても感銘を受けたエピソードの一つだったのでした。

サイクルメーターで見ると我が家からちょうど1kmの雑木林。まさかこんな近所で憧れの声に出逢えるとは…。マチガイナク、蒲谷先生のご加護によるもの。

目頭が熱いです。

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夏を涼しく過ごす為の音
2008 / 08 / 03 ( Sun )
擬音笛のひとつに赤子笛と呼ばれるものがあります。

先端(太くなっている方)に握り拳を当てて、小指から順に開いたり閉じたりする加減で音を調整します。

akagobue.jpg


入手したての頃は面白くて深夜の二時、三時に自宅でぷわぷわ鳴らしていました。しかし隣家の人たちは、うちに赤子どころか嫁さえいないことを知っているわけで、これはもしかするとタイヘンに不審がられるのではないか…と、そのことに気が付いたのは数日後。爾来ぴたっと自宅での試奏をヤメにしました。

以下の音は、寒い季節に東北の山中で録ったものです。ここは小さな山に人家数軒、その全戸ともに高齢化で街に降りてしまって無人。これを知っていたので練習場所に選んだのでした。

(click↓して再生=15秒)
夏と云えば怪談。


古来「深夜の山奥で赤ん坊の鳴き声が聞こえた…」という怖い話が日本各地に残っていますが、これだってもしかしたら、効果音屋が一人こっそり笛を吹いていたのかもしれません。
トランペッターが河原で基礎練習をやるように。

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