樹木の穴から聞こえてきた音
2008 / 07 / 28 ( Mon )
山梨の山中をマイク振り振り歩いていた時のこと。
突然こんな音が林の中から聞こえてきてびっくりしました。

(click↓して再生=16秒)
わしゃわしゃ…コツコツ…

ヘッドフォンを外すと聞こえない。眼で見ても音源がどこなのか分かりません。

指向性の強いマイクでゆっくり音の出所を探すと…。
どうも茂みの向こうの幹から聞こえてくるらしいと分かりました。あたりはもう薄暮。暗い林の中、双眼鏡を覗くと樹幹に穴があいています。鳥の巣…。
録音はヤメにしてズームで写真を撮り、離れてしばらく観察。

nest.jpg


一度だけ親鳥が飛んだのですが暗くてよく見えません。ヒヨドリくらいの大きさでした。
飛び去った彼方から聞こえてきたのは「ピーっ」という鳴き声。
でもヒヨドリって樹の幹に穴をあけて巣作りする鳥じゃないですよね…。
アオゲラ?
(場所は標高1000mにちょっと欠けるくらいの薄暗い山林、巣穴は地面から2〜2.5mくらいのところに。)

幹の根本から少し離れた所には、製材所か…と思うほど大量の木屑が山になっていました。
録れた音の中にも「コツコツコツ…」という音が聞こえます。まさに掘削中だったのでしょうか。

不思議な音が録れるのは楽しい。でも私の知識不足でそれが何の音なのか分からず「謎の音」ばかりが増えてしまうのはちょっと複雑な気分です。

さて。上記とまったく関係無いのですが、おまけカット二枚。
韮崎付近で撮ったオオムラサキ・交尾中のルリボシカミキリです。

oomurasaki.jpg ruriboshi.jpg

オオムラサキはサイズが大きいからでしょうか、
離陸する時に羽ばたきの音が聞こえたのには、驚きました。


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擬音笛(牛笛)
2008 / 07 / 23 ( Wed )
おもに「生きもの」の鳴き声などを出すための擬音笛・効果笛と呼ばれる笛があります。歌舞伎の道具として発生したもののようです。ただ、私自身でその歴史をきちんと調べたことは無いので詳細不明。

昭和初期のラジオドラマ全盛期には100種類を超える擬音笛がNHKにあったと聞きます。実際には一つの笛でカッコウ・ふくろう…と複数の鳴き声を出せるのですが、それだけ頻繁に放送や舞台の現場で使われ、またこれらの笛を作る名人・職人さんが居たということなのでしょう。

私も、とんび笛・うぐいす笛・かっこう笛・ふくろう笛…など、この手の笛を(ほんのちょっとですが)持っています。鳥笛以外に、少し珍しい(?)ものもありまして、今日はその第一弾。

牛笛。

ushibue.jpg

こんな音がします。

(click↓して再生=14秒)
昨冬、山の中で笛の練習をしました。

吹き方によって、牛だけでなく豚の鳴き声も出ます。

迫力とリアリティ重視の昨今、もはやこれらの擬音笛を現場で使うことは難しいでしょう。
でも、アニメーションの効果音あるいはSEの素材として、あえてこの「ウソっぽい」音がマッチするジャンルもあるように思います。

若い世代のアニメーターさんなどが、こういう音を効果音としてうまく使ってくれると、音響効果の世界がもっと面白くなってくるだろうな〜といつも夢想しています。

変な効果笛、まだ他にもあります。その紹介はまたいずれ。

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山の中・沼・真っ暗闇の中から咆吼…。
2008 / 07 / 17 ( Thu )
先月、カエルの鳴き声を録ろうと、福島の森の中、平伏沼(へぶすぬま)というところで一晩を過ごしました。

現地到着が夜の八時になってしまい、下見も何もあったものではなく、いきなり真っ暗闇の森を抜けて真っ暗闇の沼のほとりにたどり着きました。狙いのカエル以外に少なくとも二種。よく鳴いています。しかし道がぬかるみ、水際がよく見えません。沼にだけは落ちたくないな…と、ビクビクしつつ場所を決定。マイクをセットして、あとは翌朝日が昇るまで生録三昧です。

yamamichi0.jpg yamamichi1.jpg
<沼までの山道、昼と夜>

カエルを驚かさぬようヘッドライトも消灯していたため、目の前に広がっている(と思われる)沼もさることながら、背後左右の森がどうしても気になります。ガサっと音がするたびにドキッ。

さて。そんな繰り返しにもちょっとだけ慣れてきた頃、いきなり「その咆吼」は飛び出しました。小心者の私が真っ暗闇の中でこの声を聴いて、どれほど肝を冷やしたか…ご推察ください。その時の印象では「あ、もうすぐこっちに飛び出してくる、なんかわかんないもんに噛みつかれる…」というカンジ。身体がすくみました。

(click↓して再生=16秒)
だぎゃ〜っ…ぎゃっぎょっぎょっぎょっぎょ…。

結局、零時前と二時半頃に二回、長々とこの叫び声を聴いたものの、無事(?)でした。昨年、和歌山の山中で鹿に至近距離から「ビーっ!」と威嚇され、腰を抜かしたことがありますが声がまったく違います。なんだろう…。

平伏沼にはカエルを見守り保護している番人さんがいらっしゃいます。翌日の昼頃、このおじさんに会いました。
沼に至る道沿いで、太い枝が半ば折れて落ちてきそうになっていて、あれをどうやって伐るか…などの話をしている時、ふと昨晩のことを思い出したので、録った音をヘッドフォンでおじさんに聴いて貰いました。

「聴いたことねぇな…。タヌキかな。」
「タヌキって鳴くんですか?」
「タヌキ、鳴ぐかな?鳴がねぇだろうな。ははは。」

というやりとり。
そして「ここいらに鹿はいねぇもんな…。」とのこと。
じゃ、あの叫び声はいったい…。

numa-kiri.jpg
<昼間の沼。さーっと霧が降りてくると、とたんにカエルが鳴き出す…。>

実は後日、この謎の声解決。野鳥研究家の松田道生さんから「フクロウの雌の鳴き声だろう」とのご教示をいただいたのです。松田さんが開設していらっしゃる、鳥の鳴き声と録音に関するサイトに、まさに上掲の音とそっくりな鳴き声がアップされています。こちらは日光在住の方が2006年10月に録音なさったもの。

松田道生さんのサイト→「syrinx」
(Topページから→collection→謎の鳥→謎の鳥-17)

沼の番人=カエルの保護者おじさんはとても物静かで優しそうな方でした。お目当てのカエルは深い霧のせいか昼間も鳴いていたので、またまたマイクをセット。でもおじさんが居るので録音はちょっと無理かな…と思っていたのです。ところが、丸太で作った番小屋に入ったおじさん、まったく音をたてない…。寝てるのかな?と思って、開け放たれた戸から覗くと、小さな小さな音でラジオを聴いています。私を気遣ってくださったのでしょうか。とにかくこれほど「静かな人」はまずみたことがなく、そのことがとても印象に残っています。

そうそう…。トランジスタラジオから小さく小さく聞こえてきたのは「アルプスの少女ハイジ」のテーマ曲。なんだかそれが妙におじさんに似合っていて微笑ましく思いました。
昨年、ハイジ役の大ベテラン声優=杉山佳寿子(すぎやまかずこ)さんと、短編アニメーションのお仕事でご一緒する縁に恵まれたのです。残念ながら私は音楽とSEのミックスダウンに仕上げ当日まで追いまくられ、科白録りには立ち会えなかったものの、そんなハイジつながりも含めて、
「低い声で鳴くカエル・大きな声で叫ぶ雌フクロウ・静かなおじさん」
が記憶に残る、良い音の旅となりました。


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D50の風防試案
2008 / 07 / 13 ( Sun )
SONY PCM-D50は内蔵マイクが「吹かれ」にとても弱い。それだけの理由でもないのですが、野外録音ではほぼ100%外部マイクで録っています。

でも、風に悩まされずこれ一台でフィールドレコーディングが出来れば、格段に軽装で、もっと気軽に録れるわけです。

導入してすぐの頃「D50をカゴに入れる」という方法を試してみたので、レポートしてみます。

操作性ゼロですが、とにかく風を防ぎたい…ということを優先した、虫かご簡易風防システム。

mushikago0.jpg mushikago1.jpg mushikago2.jpg

ヘッドフォンやリモコンのケーブルはスライド窓から外に出せます。

虫かごそのものは目が粗いので、ほとんど風を遮りません。ですが、こうした「箱」に入れることにはちょっと重要な意味もあります。「被せるモノ」とマイク部分との間にクリアランスを確保する…つまり網袋やスポンジ、毛むくじゃらのジャマーをマイクに直接接触させないことで、音質変化をかなり抑えることができるからです。

この二段階遮風でもたらされる効果は、まだ中の下くらい。これをもう一枚大きな袋に入れることでより一層、風に強くなります。写真がないのですが、ウレタン素材のもの(デジカメや携帯のソフトケースに使われているようなマテリアル。)はかなり強力で、ちょっとした突風でも「吹かれ」ませんでした。ただ、当然音質はコモりますので後にHiを上げる補正が必要です。ガーゼの袋、モヘア素材の毛糸で編んだカバーなどなど、機会をみて色々と試してみようと思っています。

「風防の常識」なのかもしれなのですが、風を遮るだけでなく「広い面」で受けない、風圧を分散する…など、形状による効果もタイヘン重要だということが分かってきたので、操作性も含めてまだまだ改善の余地だらけ。

このチープな方法にメリットというものがあるとすれば、虫かごは荷物満載のリュックなどでD50を運ぶ際の保護ケース、網袋はケーブル収納用などに使えて
「風防分のかさばる荷物が増えない」
ということでしょうか…。

虫かご、網袋ともに旅先のダイソーで購入。210円。

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とんびに襲われ未遂事件
2008 / 07 / 07 ( Mon )
渡良瀬遊水地というところへ、録音の下見に行ってみました。

ここは(たしか)埼玉・群馬・茨城・栃木の四県にまたがる広大な湿原。公害史上に悪名高い足尾銅山から流出した鉱毒対策のために作られた遊水池です。流域の歴史に目を向けると、谷中湖と呼ばれる第一遊水池に沈められた谷中村のことも含めて、どうしても日本近代史の暗部、我々の先祖が関わった恥ずかしい失敗と、今に続くその隠蔽の事実に触れざるを得ない場所でもあります。

渡良瀬川は一昨年、藤岡からまさにこの遊水池の横を抜けて利根川に合流するまでの区間をカヌーで下りました。しかし陸地から内部に入りそのほぼ全域を見て回ったのは今回が初めて。山手線の内側の約半分…と表現される、この広い湿地ならば比較的近場でそれなりのナマロクができるのではないか…と常々思っていました。

結果から先に言えば、残念ながらNG。
これだけの面積を誇りながら、地面の起伏がなく真っ平らな広野ゆえ、2〜3km先を走る道路のノイズが遊水池にまんべんなく行き渡っているようでした。辛うじて北から北東の方面はその騒音が弱い…と分かりましたが、それも他の方角に較べればマシ…という程度。深夜から明け方にかけてさえゴーっという低域ノイズが葦原に充満していました。

さて。こうした車ノイズや当日行われていた除草作業、さらに風が少々強かったこともあって、早々に録音は断念。機材を片づけて夕暮れを迎えました。残日が西の空を染め、風が見渡す限りの葦を揺らす、ちょっと良い風景です。

watarase.jpg

ところが、蚊に喰われつつ携帯を引っ張り出し、友人に「本日の録音は収穫無し」と報告Mailを打っていたまさにその時。頭上に気配を感じました。ハッとして見上げると三羽のタカ類が旋回。時刻は19:30。あたりは暗く、空の残照をバックに真っ黒なシルエットだけが見えました。尾の先端真ん中はくぼんでおらず平らに揃っていたのですが、私に識別など出来るはずもなく、三羽ということもあって恐らくはトビ(とんび)だろうと思いました。ぎょっとしたのは次第に高度を落として私のアタマの上10mくらいのところを回り始めたこと。

襲われる…と思ったのと、片づけてしまった機材を引っ張り出し、マイクとケーブルをつないだのがほぼ同時。あわててマイクを空に向けました。

身の回りの荷物は全てテントに入れてしまっていたので、攫われるものは何もないことをきょろきょろと確認しつつも、内心はかなりビクビクでした。それほど近かった。でもこれだけの近距離で鳴いてくれればかなり鮮明な「ぴーひょろひょろ…」が録れるのではないか、と期待しつつ…。

鳴いた!ばっちり鳴いてくれた!

のですが…。
頭上を舞うトビ(?)こんな声を出したのです。

(click↓して再生=11秒)
とんびの鳴き声?

(二声目はマイクが風に吹かれてボコボコ云ってますが…)音だけ聴いたら犬の甘えた声そのもの。これは「警戒・威嚇」の鳴き声なのでしょうか?そもそもトビってこういう鳴きかたをするのでしょうか?

今回、録音ロケハンとしては失敗でしたが、水際でダイサギとササゴイという美しい凸凹コンビが並んで水面をニラみ、魚を獲る様子がゆっくり観られましたし、夜中の二時過ぎでさえオオヨシキリは結構さえずっている…ということをこの耳で聴くことができました。また、何の鳥だか全然分からないのですがタカ類の飛翔もたくさん眼にして、楽しいひとときでした。

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