哀れ蚊(あわれが)
2007 / 11 / 20 ( Tue )

ここのところ、いきなり本格的な冬の冷え込み。
つい先だって、この冬将軍到来のちょっと前のことですが、部屋で一匹の蚊を見つけました。

晩秋の時季にまだ生き残っている蚊のことを「あわれ蚊」というのだと友人が教えてくれました。太宰治も『哀蚊』(あわれが)という小説を残しています。1927年、十八歳の太宰が「弘高新聞」に書いた短編だそうですが未読。

さて。この「あわれ蚊」を捕らえて、その小さな音を録音してみることにしました。




こういう録音ブースに入って貰い、その鳴く(飛ぶ?)音を録ったのですが、いざやってみると、音が小さく背景ノイズに埋もれてしまうこと以外にも、二つ問題がありました。

1:紙コップ(プラスチック製)の中は反響が強く、キンキンした音になってしまう
2:容積が小さいので、蚊が長く飛行してくれず、すぐにコップの壁にとまってしまう

1については、写真にも写っているように、フェルトの切れ端を中に入れて吸音することでほぼ解決。2の問題がやっかいでした。「庭にハーブを植えておくと蚊が寄りつかない」という話を聞いたことがあります。それを思い出して、ローズマリーをペットボトルの蓋に載せて、コップの中に入れてみます。蚊が嫌がって逃げ回ってくれるかもしれない…という期待を込めて。しかしほとんど効果が無いようでした。

コップの内壁に殺虫剤でも塗ろうか…とも考えましたが、ただでさえ弱々しい哀蚊です。ぽとっと落ちて死なれては困るのでこれは実行する勇気がありません。容器を大きくすれば、蚊がマイクから離れて飛ぶことになって、まったく音が拾えません…。

結局、良策思いつかず。一番長く飛んでくれた時で8秒くらいでしたか。

コップの上部に開けた穴から差し込んだピンマイクで収録したものです。ちょっと外のノイズが大きいのでEQで低域をカットしようとしましたが、やはりホンモノの蚊の音はかなり低い帯域が出ています。マイクの直近で飛んでいるため、近接効果で低音が強く録れていることもあると思います。

(↓clickして再生=9秒)
feat.哀蚊(ギャラは血…)

我々におなじみの、あの「ぷ〜ん」という高い音は、少し離れた所を飛んでいる蚊の音。その小さな音のみを捉えることが可能な人間の耳ならでは、ということかもしれません。


余談。
「あわれが/あはれが」という言葉をちょっと調べてみましたが、小学館の日本国語大辞典(初版)にさえ収録されていません。見出し語として上がっていたのは「あばれか(暴蚊)」のみ。これは夏の終わりに猛威を振るう蚊の集団のことのようです。

この「あばれか」も古くは「あはれか」と書いていた可能性があり、もしかするといつの頃からか「あはれ」が「哀れ」に転意して使われ始めた言葉??とも思いましたが、ただの思いつきです。

江戸中期以前に編まれた文献上で「あはれか(=哀れ蚊)」の使用例があることを、どなたかご存じでしたら教えてください…。


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